ベーシックインカムはセミリタイアを加速し倫理問題はいずれなくなる

菅総理の経済ブレーンである竹中平蔵さんが、2020年9月23日のBS-TBSの報道番組『報道1930』で「所得制限付きベーシックインカム」を提案しました。

 

要約すると、

  • マイナンバーと銀行口座をひも付けて所得を把握する
  • 国民全員に毎月7万円の支給し、所得が一定以上の人は後で返す
  • 財源として生活保護と年金を廃止する

となります。

 

これをきっかけにTwitterなどのネットメディアが「倫理問題あり!」と反応していますが、民間企業で働く私から見ると違和感があります。

 

本記事では、

ベーシックインカムはセミリタイアを加速し倫理問題はいずれなくなる話

をお伝えします。

 

目次

ベーシックインカムはセミリタイアを加速し倫理問題はいずれなくなる話の前に:政治の提案とは

政治の提案は具体性が必要です。

 

Twitterなどのネットメディアが「倫理問題あり!」と反応している事より、この提案が優れていると言えます。

 

ベーシックインカムの提案が具体的で的を得ていたからこそ、Twitterなどのネットメディアが大騒ぎしているのです。

 

昔にある討論番組で『原発をなくすべき』と主張する政治家がガン無視されていました。提案に具体性がなかったからです。

 

原発の是非を語る提案なら『電力の多くが水を温めるために使われる。廃校になる小学校を小型火力発電所にしてお湯を配る。』ぐらいの具体性がないと議論が起きません。

 

所得制限付きベーシックインカムの骨子

所得制限付きベーシックインカムの骨子を解説します。

 

  • マイナンバーと銀行口座をひも付けて所得を把握する

 

国民の所得情報は共有財産です。マイナンバーと銀行口座をひも付けて所得を把握しておけば税の徴収も給付金の配布も簡単です。

マイナンバーと銀行口座をひも付けて所得を把握するのはアメリカでは普通に実施されています。だからこそコロナで給付金が早く配られたのです。

デメリットはありません。

 

 

  • 国民全員に毎月7万円の支給し、所得が一定以上の人は後で返す
  • 財源として生活保護と年金を廃止する(*)

 

(*)の補足:竹中平蔵さんは「社会保障が要らないという話にならないか」と問われ、こう説明しました。

「基本的にはそうで、ちょっとこれね、生活保護が全部不要になるとは言いませんけど、それで制度設計を作ることができます」
「このベーシックインカムというのは、『究極の税と社会保障の一体改革』なんです。これは社会保障でもあるし、負の所得税だから税制でもあるし、そういうことをやることによって、実は非常に公平な形なんですね」

 

政策は予算配分の権力闘争です。ベーシックインカムでお金をばら撒くだけでは政策とは言えません。他の予算を減らす必要があります。

 

所得制限付きベーシックインカムは「社会保障をなくしてベーシックインカムに一本化する」です。

 

ベーシックインカムは誰にとって倫理問題があるか?

制度を変えると割を食う人がいます。政策は究極的には「誰を救うか/救わないか」という2者択一の判断を繰り返す事になります。

 

所得制限付きベーシックインカムでは

  • 生活保護と公的年金制度を含む社会保障を月7万円以上受けている人(7万円以上もらえなくなる)
  • 高額所得者(月7万円をもらえない)

が割を食います。

 

具体例を3つ挙げます。

 

(1) 生活保護受給者

厚生労働省の2017年度資料によると、生活保護受給者は現在164万世帯214万人で、総額3.8兆円が支出されている。(将来的には30兆円に達する見込み)

 

(2) 人工透析患者

日本透析医学会が実施している統計調査「わが国の慢性透析療法の現況」によると、2017年末現在、国内の透析人口は、33万4,505人。

年500万円の税金が投入されるとすると約1兆5000億円/年が支出されている計算になる。

 

(3) 胃ろう患者

胃ろう患者の数は約40万人。医療と介護を合わせて年500万円の税金が投入されるとすると約2兆円/年が支出されている計算になる。

 

 

この3つだけで7.2兆円/年の税金が支出されている計算になります。所得制限付きベーシックインカムでは上記対象者が割を食います。

 

さらに、社会保障、例えば生活保護と年金行政、には非常に多くの行政コストが掛かっています(例えば、生活保護を受給して良いかの判断をする人など)。

 

このコストがなくなる分だけ国民に還元できるお金が増えます。固定費を削減して成果を増やしています。この点は論理的に優れた提案です。

 

割を食う人の立場では「ベーシックインカムは倫理問題あり」となります。

 

ベーシックインカムは論理的に正しい

所得制限付きベーシックインカムで損する人・得する人を整理します。

 

損する人:

月7万円以上の社会保障を受けている人、受ける見込みのある人

例えば、生活保護受給者、人工透析患者、胃ろう患者、将来の生活保護受給者、社会保障の行政を行っている人

 

得する人:

ベーシックインカムの受給者全員(生活保護受給者含む)

特に、貧困で困っているが「生活保護の手続きが面倒だから・世間体が悪いから」などの理由で受給しない人

 

納税者の感情を考えたら、

  • 生活保護受給者が月20万円もらって医療費が無料でパチンコする
  • 不摂生で人工透析が必要になった人に大量の税金が投入される
  • 健常者になる見込みのない患者を延命させるために大量の税金が投入される

 

ぐらいなら

 

  • 貧困で困っているけどギリギリで生活しつつ、一定の確率で自死を選択せざるを得ない人に月7万円の支給をする

 

方が建設的です。論理的に正しいです。

 

私は団塊ジュニアの40代です。団塊ジュニアは割を食う世代です。私の世代が老後に生活保護受給者となる事で、生活保護予算が10倍になると言われているからです。

 

でも所得制限付きベーシックインカムは日本全体で考えると論理的に正しいと言えます。

 

倫理問題は時間が解決する

所得制限付きベーシックインカムに対してTwitterなどのネットメディアが大騒ぎしているのは

 

  • 生活保護受給者がかわいそう
  • 多額の社会保障を受けている人はどうすれば良いのか
  • 高齢者を殺すつもりか

 

のような弱者切り捨ての側面です。「倫理問題あり!」と主張しています。

 

一方で、所得制限付きベーシックインカムの要素である

 

  • 一部の弱者を狭く深く助けるのではなく、多くの弱者を浅く広く助ける方が公平。国民から集めた税金を使うなら公平な政策の方が良い
  • 固定費(行政に掛かるお金)を削減して成果(国民へ還元するお金)を増やす

 

というのは「論理的に正しい」です。

 

論理的に正しければ倫理問題は時間が解決します。

 

論理的に正しいけど倫理的に正しくない事は、時間が経つといずれ倫理的にも正しくなります。「かわいそうと思ってたけどやっぱりこっちの方が正解だよね」と世論が動きます。

 

(例)

  • 個人情報のデジタル化はけしからん!→マイナンバーが全国民に発行されました
  • 起業はリスクが大きいからけしからん!→普通の事になりました
  • プログラマで金儲けするのはけしからん!→今は金儲けのToolになっています

 

ベーシックインカムはセミリタイアを加速し倫理問題はいずれなくなる

Twitterなどのネットメディアが「倫理問題あり!」と反応する事は、民間企業で働く私から見ると違和感があります。

 

「論理的な判断をする事」は民間企業では普通のことだからです。民間企業の判断では感情をできるだけ排除して論理的に正しいものを選択します。

 

民間企業では自分のチームに不利益な判断が頻繁に行われますが、会社全体として正しい方向ならば「ぐっとこらえて飲む」のが論理的です。

 

民間企業では数か月で消化される変化が国だと数十年掛かるのだと思います。とはいえ少しずつ変化が訪れるでしょう。

 

コロナで一気には変わりませんが、このようなきっかけが何度も積みあがって、後で「コロナの時にベーシックインカムの流れができたよね」と振り返るようになるのかもしれません。

 

年間の生活保護費用が3.8兆円から30兆円になるまでには、ベーシックインカムが導入されると同時に社会保障が一気に軽くなるでしょう。

 

40-50代の団塊ジュニアの我々の対策は「収入減を複数化する」「健康になる」「長く働く」です。

 

セミリタイアが加速します。

 

こちらの記事を読んでセミリタイアに一歩踏み出してください。

 

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