今回は『日産ゴーン事件芸術論』というテーマで記事を書きます。
日産ゴーン事件は、日産内部の権力争いに東京地検特捜部が絡んだ事件です。
司法取引でトレードオフを解決し、さらに東京地検特捜部・日産・カルロスゴーンなどの登場人物全員にメリットを与えました。芸術的です。
本記事では、
日産ゴーン事件では、どのようにトレードオフを解決し、どのようなメリットを東京地検特捜部と日産とカルロスゴーンなどの登場人物全員に与えたか
をお伝えします。
日産ゴーン事件では司法取引がトレードオフを解決した
日産ゴーン事件では司法取引が東京地検特捜部と日産のトレードオフを解決しました。
トレードオフとは、一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという状態・関係のことでです。
一般的にトレードオフの状況では、具体的な選択肢の長所と短所をすべて考慮したうえで決定を行うことが求められます。もし、トレードオフを解決できるアイデアがあったら双方が幸せになります。
東京地検特捜部は大物を逮捕したら手柄になります。脱税している人から税金を徴収したら手柄になります。
東京地検特捜部は日本国内の情報は収集できます。しかし、海外の情報は収集しづらいです。
特に、今回カルロスゴーンの自宅を提供していたブラジルやレバノン等は、カルロスゴーン寄りの国なので情報を提供してくれる可能性は低いです。
東京地検特捜部はどうにかして日産海外の情報を収集したいのです。
日産の海外部門の人はカルロスゴーンの不正を知っていました。これはおかしい、という正義感もあったでしょう。
このご時世に不正を隠し通せるわけがないという不安もあったでしょう。自分だけは助かりたいという保身の気持ちもあったでしょう。
日産の海外部門の人は自分と会社の罪をどうにかして減らしたいのです。
日産ゴーン事件において、東京地検特捜部と日産の海外部門の両者にとって司法取引はメリットのある制度です。
東京地検特捜部は海外の情報を収集できます。日産の海外部門は自分と会社の罪を軽くできます。日産の海外部門の内部通報者は保護されます。
司法取引と海外案件は親和性が高いです。
司法取引について詳しく知りたい方は、こちらの情報が比較的新しくて分かりやすいです。
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日産ゴーン事件は東京地検特捜部と日産の海外部門のトレードオフの解決に留まりません。
日産は司法取引によって日産ゴーン事件を明るみに出しました。日産ゴーン事件を東京地検特捜部および世界中のマスコミの鑑別に挙げました。
日産ゴーン事件は、東京地検特捜部、日産、カルロスゴーンの3者にメリットを与えています。
東京地検特捜部、日産、カルロスゴーンの3者にどのようなメリットをもたらしているかを次項から説明します。
東京地検特捜部のメリット:大物を逮捕できる・税金を取れる
日産ゴーン事件の東京地検特捜部にとってのメリットは『有名な人物を逮捕できる事で東京地検特捜部の宣伝になる事』と『税金または制裁金を取れるチャンスが生まれた事』です。
恐らくこの事件はカルロスゴーンが数年刑務所に入り、日産が制裁金を取られて終わるでしょう。
東京地検特捜部は日産の内部通報をきっかけに法に照らし合わせて手続きすれば税金を取れます。
日産の内部通報が不十分なら日産の責任なのでデメリットはありません。
日産のメリット:負の遺産を精算できる・良い会社を新しい世代に残せる
日産ゴーン事件の日産にとってのメリットは『負の遺産を精算出来る事』と『良い日産を新しい世代に残せる事』です。
日産の取締役会がカルロスゴーンに手を焼いていた事は容易に想像できます。取締役が少しでも抵抗すると首を切られたと聞きます。
裸の王様です。負の遺産です。老害です。
日産は東京地検特捜部の力を借りて負の遺産を清算できます。東京地検特捜部に全面的に協力して、日本の法律に則って制裁金などの処理をするのみです。
東京地検特捜部の力を借りないと出来なかったという背景もあるのかもしれません。
そもそも19年間も1人がトップに居座るのは異常です。カルロスゴーンがやった事はコストカットだけです。
初期に実績を上げただけです。ビッグバス効果だけです。ビッグバス効果は以下を意味します。
業績が悪化し、赤字が不可避な年度に、あえて不良在庫の処理やリストラを一挙に進めることによって巨額な特別損失を計上し、翌期以降の損失・費用負担を軽減させ、業績がV字回復したように見せること。
コストカットすればその瞬間はV字回復できます。ある局面ではコストカッターは必要ですが物事には局面があります。
V字回復を果たしたら次は新しい価値を創造する必要があります。新しい価値を創造する事が得意な人がトップを務めるべきです。
最近は世界的に好景気です。2017-2019年は世界的に大きな問題が発生していません。
その中でルノーは業績を大きく伸ばせていません。日産は業績を伸ばしています。これは日産の力です。日産の社員の頑張りによる結果です。
19年前のコストカットによるV字回復の実績は認めますが不正はいけません。
M&Aの成功報酬は世界平均で3-5%と聞きます。カルロスゴーンは堂々と5%の成功報酬をもらってスパッとやめれば良かったのです。
『19年前の恩を忘れたのか』という人がいます。日産に19年前から会社にいる人はどれだけいるのでしょうか。現在日産で働いている人の主流は19年以上働いている人ではありません。
組織は内部構成員が変わる事で成長し続けます。関連記事をこちらに書きました。
【内部構成要素を変える!】気弱サラリーマンが成長し続ける方法
日産のリーダーをこの辺で交代するのが適切です。解任すれば新しいリーダーが必ず現れます。パレートの法則によると、どのような組織でも20%の人が牽引する構成になります。
パレートの法則を生かす方法を書いた記事をこちらに書きました。
【パレートの法則】気弱リーマンがライバルを出し抜いて100人中1位になる方法
老害がいなくなってもマイナスの影響はありません。日産は負の遺産を追い出すチャンスを生かしたと言えます。
日産は日産ゴーン事件をきっかけにより良い日産を新しい世代に残す事ができます。
カルロスゴーンのメリット:穏やかな老後を過ごせる
日産ゴーン事件はカルロスゴーン本人にもメリットがあります。『向いていない局面における重責から解放される事』と『豊かな老後を送れる事』です。
カルロスゴーンも得意のビックバス効果を発揮する事はもうできないのですから、向いていない局面の重責からは解放されるのが良いです。
最終的には、V字回復をした事はカルロスゴーンの功績として評価されるでしょう。カルロスゴーンによるV字回復の功績は日産の社員も認めるでしょう。
カルロスゴーンは適正な報酬を受け取ってブラジルかレバノンあたりで穏やかな老後を送れば良いです。
日産ゴーン事件の振り返り:ヨーロッパの知恵は奥深い
日産ゴーン事件の報道を聞いて、やはりヨーロッパの知恵は奥深いと感じました。ヨーロッパの人や会社は協業相手としては簡単な相手ではありません。
ヨーロッパは狭い土地・多くの民族・深い歴史がある地域です。一枚岩では動きません。日本人の想像以上に手ごわいです。
私は過去にヨーロッパと協業している企業にいた事があるのでよく分かります。
私のヨーロッパ企業に対するイメージです。
- ルール化して日本を統治する事に力を注ぎます
- 日本はコストカットを続けているのに、ヨーロッパでは雇用を増やします
- 9時に来て午後4時に帰ります
- 金曜日は午前だけ働いて帰ります
- Meetingでは報告資料を一切作りません
- プロセスには興味がなく結果だけに興味があります
- 品質に関する意識が低いです
- 夏休みは平気で2か月取ります
- 重要な仕事の途中でも平気で帰ります
- 日本の主張は全く聞きません
- ヨーロッパ人同士が1チームとなって動く事はありません
このような自由な環境で仕事をすると200人に1人ぐらい超絶優秀なヤツがいます。その1人がいる事で会社が回っています。
恐ろしいのはその1人がやめてしまった場合です。残りの199人の超絶出来ないヤツ、しかも口だけ達者で言う事を聞かないヤツだけが残ります。
恐らくルノーも同様の雰囲気だったと推測します。やりづらい相手、かつ、もう切り捨てても良い相手ばかりが残っているのでしょう。
ビッグバス効果は日本の経営者ではなかなか実行できません。『組合の反対』や『日本人の優しい心』などの壁があります。ある局面ではヨーロッパの力が必要だったのでしょう。
でも局面が変わったら日産は自立すべきです。日産は老害を排除する形で内部構成員を変更すべきです。そうする事でより良い日産を新しい世代に残す事ができます。
その為に戦うべきです。頑張れメイドインジャパン!
司法取引について詳しく知りたい方は、こちらの情報が比較的新しくて分かりやすいです。
⇒ Q&Aでわかる日本版「司法取引」への企業対応 新たな協議・合意制度とその対応 の詳細を確認する
あなたの参考になれば幸いです。
最後まで読んで頂きありがとうございました^^